Sorareは、既存投資家から追加資金を調達し、無料プレイ型の「Sorare Arcade」を軸に収益構造の再建を進めています。
重要なのは資金調達額そのものではなく、高額なスポーツライセンスとNFT販売に依存した成長モデルから、幅広いユーザーが継続的に遊べるGameFiへ転換できるかです。
Sorareが既存投資家から追加資金を調達
フランス・パリを拠点とするファンタジースポーツ企業Sorareは、2026年9月、既存投資家を中心とする追加資金調達を実施しました。
参加したのはBenchmark、Accel、Partech、Kibo Venturesのほか、共同創業者のNicolas Julia氏とAdrien Montfort氏です。BlockchainGamerが引用したMaddynessの報道によると、Julia氏は調達規模について「数千万ユーロ」と説明しています。ただし、正確な調達額と今回の評価額は公表されていません。
そのため、海外記事の見出しにある「1,000万ドル超」という表現だけを基に、確定した調達額として扱うべきではありません。現時点で確認できるのは、初回分の資金がすでに払い込まれ、追加分も予定されているという点です。
今回のラウンドは、急拡大を目的としたNFTブーム期の大型調達とは性格が異なります。Sorare自身が掲げる目標は、事業規模を無条件に広げることではなく、成長を維持しながら2027年末までに黒字化することです。
2021年の大型調達から事業再建へ
Sorareは2021年、SoftBank Vision Fund 2が主導したシリーズBで6億8,000万ドルを調達し、評価額43億ドルに達しました。当時は、公式ライセンスを取得したスポーツカードとNFT、ファンタジースポーツを組み合わせた事業モデルが大きな期待を集めていました。
しかし、このモデルには重い固定費があります。クラブ、リーグ、選手の名称や画像を正規に利用するにはライセンス契約が必要であり、契約時に想定したほどカード購入が伸びなければ、権利費が収益を圧迫します。
BlockchainGamerの記事によると、Sorareは契約の再交渉や撤退を通じ、5億ユーロを超える契約上の支出義務を削減しました。年間ライセンス費も従来の5分の1になったと報じられています。さらに人員を削減し、ニューヨーク拠点を閉鎖して業務をパリへ集約しました。
これは、Web3ゲームにおいて有名IPを獲得するだけでは持続的な競争力にならないことを示す事例です。ライセンス費に見合う継続率、購入頻度、顧客生涯価値を作れなければ、知名度の高いスポーツIPも経営上の負担になり得ます。
無料プレイのSorare Arcadeが成長の中心
再建戦略の中心にあるのが「Sorare Arcade」です。公式ゲームルールでは、Arcadeはテーマ別カードセットを集め、コレクションアルバムを完成させながら、実際の試合結果に連動する課題へ挑戦するイベント型モードと定義されています。
ユーザーはゲーム内でチームを編成し、現実の選手成績に基づく条件を達成することでゲームボードを進みます。報酬にはGems、Essence、Wheel Ticketsなどのゲーム内アイテムが含まれます。公式ルール上、Sorareの各コンペティションは参加料を必要としない無料プレイとして提供されています。
この設計は、最初から高額なNFTカードの購入を求めるモデルとは異なります。まず無料でカード収集やチーム編成を体験してもらい、プレイを続けたい利用者が必要に応じてコレクションを拡張する流れです。
Julia氏は、Arcadeが2026年に1,500万〜2,000万ユーロの純収益を生み出すとの見通しを示しています。また、同氏の発表では、2026年上半期の純収益は前年同期比85%増加し、カードを購入したユーザーは10万人を超えました。
ただし、成長率だけで黒字化を判断することはできません。無料ユーザーが繰り返し遊ぶか、有料購入が一時的なイベント需要に終わらないか、ライセンス費や報酬原資を差し引いた後にも利益が残るかが重要です。
Solana移行でNFT基盤も再構築
Sorareは事業モデルだけでなく、ブロックチェーン基盤も見直しました。公式サポートによると、従来利用していたアプリケーション専用のStarkEx環境から、公開型レイヤー1であるSolanaへカードNFTを移行しています。
移行計画では、2025年10月後半からSorareカードを同一メタデータのSolana NFTとして扱い、ETH残高についてはBaseへ移す方針が示されました。Sorareウォレットには同じ秘密鍵から導出されるSolanaアドレスが対応し、Sorare側がユーザーの秘密鍵へアクセスしない非カストディ型の仕組みを維持すると説明されています。
Solana移行の狙いとしてSorareは、外部ウォレットやマーケットプレイスとの接続、オンチェーンでの透明性、カードNFTの用途拡大を挙げています。
もっとも、チェーン移行だけでユーザーが増えるわけではありません。Sorare Arcadeのような遊びやすい入口、実在選手の成績を使ったゲーム体験、カードを保有する意味が組み合わさって初めて、技術基盤の改善が事業価値につながります。
黒字化を左右する3つの課題
第一の課題は、無料プレイから継続的な収益へ転換できるかです。Arcadeは参入障壁を下げますが、無料ユーザーが増えるだけでは利益になりません。パック獲得、コレクション完成、実試合との連動を通じ、課金を強制せずに繰り返し遊びたくなる循環を作る必要があります。
第二の課題は、スポーツライセンスの選択と集中です。SorareはFootballだけでなく、Sorare NBAやSorare MLBも運営しています。各競技でカード販売やゲーム参加を伸ばしながら、権利費を回収できる契約条件を維持できるかが問われます。ライセンス数の多さよりも、実際に遊ばれる大会とカードの用途を優先する経営が必要です。
第三の課題は、NFTカードの価値とゲームバランスの両立です。新シーズンのカード販売を続ければ、過去シーズンのカードが使われにくくなる可能性があります。一方で旧カードを強くしすぎると、新規販売を伸ばしにくくなります。Sorare Pro、Arcade、NBA、MLBなど複数モードを活用し、保有カードに継続的な用途を持たせることが重要です。
GameFi事業者にとってSorareの再建は、トークン価格ではなく、ユーザー継続率、ゲーム内消費、IPコスト、運営費を一体で設計する必要性を示しています。
英国で続く法的リスクにも注意
Sorareには事業面だけでなく、規制面の不確実性も残っています。英国のGambling Commissionは、Sorare.comが必要なライセンスを持たずに賭博設備を提供した疑いがあるとして起訴しています。
英国当局の公式発表によると、Sorareは無罪を主張しており、裁判は2027年6月7日にバーミンガム治安判事裁判所で開始される予定です。現時点では裁判所による最終判断が出ていないため、違法性が確定したかのように表現するのは適切ではありません。
またBlockchainGamerは、Premier Leagueへ支払われた約1,000万ポンドが、英国National Crime Agencyの捜査に関連する命令の下で凍結されていると報じています。これはGambling Commissionによる起訴とは別の問題として区別する必要があります。
無料プレイ型へ移行しても、カード購入、報酬、二次流通、偶然性を伴う機能が各国でどのように評価されるかは重要です。Sorareの裁判結果は、スポーツNFTやWeb3ファンタジーゲームを運営する他社にも影響を与える可能性があります。
まとめ
Sorareの追加調達は、NFTブームの再来を狙うニュースというより、コスト構造を改めて黒字化を目指す再建資金として捉えるべきです。
同社はSorare Arcadeで無料ユーザー層を広げ、Sorare Pro、Sorare NBA、Sorare MLBを含むゲーム体験へ接続しようとしています。同時に、ライセンス費の削減、パリへの業務集約、SolanaとBaseへの基盤移行を進めました。
今後の評価ポイントは、Arcadeの利用者数だけではありません。無料ユーザーが継続し、無理のない形で購入へ進み、権利費や運営費を上回る利益を生み出せるかが核心です。さらに英国での法的手続きも残っており、2027年末の黒字化目標には事業と規制の両面で課題があります。
Sorareの再建は、GameFiが投機中心のNFT販売から、長く遊ばれるゲーム事業へ移行できるかを測る重要な事例となりそうです。

