ブロックチェーンゲーム市場では、資金調達額やトークン価格よりも、継続的に遊ばれるゲームと再現可能な収益モデルを構築できるかが重要になっている。 2026年9月の動きから見えてきたのは、SorareやAnimoca Brandsのような長期経営型企業と、Cambriaなど小規模ゲームの事業転換という二つの生存戦略だ。 本稿ではBlockchainGamerの週報を基に、各事例の意味とユーザーが確認すべきポイントを整理する。
Sorareが追加資金を確保、黒字化への再建を継続
ファンタジースポーツゲームを展開するSorareは、既存投資家や創業者から新たな資金を確保した。具体的な調達額と企業評価額は公表されていないものの、CEOのNicolas Julia氏は数千万ユーロ規模であることを明らかにしている。
Sorareは、実在するサッカー、バスケットボール、野球の選手をデジタルカードとして収集し、現実の試合成績に連動したファンタジースポーツを遊べるサービスだ。NFT市場の拡大期には、スポーツIPとデジタル所有権を組み合わせた代表的プロジェクトとして巨額の資金を集めた。
しかし、ライセンス費用を伴うスポーツ事業は、カード販売が伸び続けなければ固定費が重くなる。そこでSorareは、従来の高額カード中心の設計だけに依存せず、無料で参加しやすいArcadeモードを導入。カード収集、チーム編成、実際の試合結果に基づくチャレンジを、より簡潔な流れで体験できるようにした。
BlockchainGamerの報道によると、Sorareの2026年上半期の純収益は前年同期比で85%増加し、カード購入者は10万人を超えたという。Julia氏は2027年末までの黒字化を目標としている。ただし、増収と最終的な黒字化は同じではない。ライセンス費用、運営費、ユーザー獲得費用まで含めた収益構造を改善できるかが今後の焦点となる。
Arcadeモードが示す「先に遊び、後から所有する」設計
Sorareの方向転換で注目すべきなのは、NFT購入をゲーム開始の前提にしないことだ。Arcadeでは、まず無料でゲームループを理解し、カード収集や編成に魅力を感じたユーザーが必要に応じて有料要素へ進める。
この設計は、ウォレット作成や暗号資産購入を最初に要求した従来型Web3ゲームとは対照的だ。初回プレイの負担を減らし、ゲームとして定着した後にデジタル所有や取引を提示することで、暗号資産に詳しくないスポーツファンにも参加経路を広げられる。
一方、無料化だけで持続可能になるわけではない。無料ユーザーが長期的なプレイヤーへ転換するか、有料カードにゲーム上の納得できる用途があるか、課金者と非課金者の競争条件が適切かを継続的に検証する必要がある。
プレイヤー側は、カードの市場価格だけでなく、カードを使ってどのようなゲーム体験を得られるのかを確認したい。運営側にとっても、投機的な売買高ではなく、継続率や課金者数、ゲーム内消費といった指標が事業の耐久性を判断する材料になる。
Animoca BrandsのNasdaq上場計画は「中止」ではなく協議停止
Web3ゲーム企業への投資やThe Sandboxなどの事業で知られるAnimoca Brandsは、Nasdaq上場企業Currenc Groupとの企業結合協議を停止した。両社が米国証券取引委員会へ提出した文書では、2026年9月21日に協議停止を発表したことが確認できる。
当初の構想では、Currenc GroupがAnimoca Brandsの全株式を取得し、統合会社の発行済み株式の約95%をAnimoca Brands側の株主が保有する予定だった。ところが、独占交渉期間が終了しても最終契約を締結できず、両社は提案されていた取引を現時点で停止することに合意した。
BlockchainGamerは過去の財務諸表に関する監査の長期化を背景として挙げている。一方、公式発表では、完了までに必要な時間が両社の短期・中期目標と合わなくなったことや、市場環境の変化が説明されている。したがって「監査だけが唯一の原因」と断定するのではなく、複数の事業上の判断が関係した協議停止と理解するのが適切だ。
Animoca Brandsは主要取引所への上場方針そのものを撤回していない。今回の事例は、Web3企業であっても、上場には監査、企業統治、開示体制、取引スケジュールといった伝統的な資本市場の要件が不可欠であることを示している。
大規模ゲームは資本と開発基盤を長期投資へ変える
週報では、現在のブロックチェーンゲームを大きく二つのグループに分類している。一つは、十分な資金と既存のゲーム開発経験を持つチームによる大規模プロジェクトだ。代表例として、NEXPACEのMapleStory UniverseとFenris CreationsのEVE Frontierが挙げられた。
MapleStory Universeは、MapleStoryのゲームアイテムをブロックチェーン上で再構成し、プレイヤーだけでなく外部開発者も参加できるエコシステムを目指している。公式ホワイトペーパーでは、ゲーム、マーケットプレイス、開発者向けツールを通じて、アイテムの用途を複数のアプリケーションへ広げる構想が説明されている。
EVE Frontierは、宇宙サバイバルMMOを基盤に、プレイヤーがSmart Assembliesと呼ばれるプログラム可能な構造物を配置できる設計を採用している。公式FAQによれば、基盤データは公開台帳に置かれる一方、一般プレイヤーがブロックチェーンを直接操作しなくても探索や戦闘を楽しめる。Web3機能を世界の拡張手段として使い、ゲームプレイ自体は通常の利用者にも開く考え方だ。
両作品に共通するのは、トークン発行を最終目的にせず、既存IP、ゲームエンジン、運営経験、開発者向け機能を長期的な世界づくりへ接続している点である。ただし、大規模開発は完成まで時間を要するため、ロードマップの更新状況や実際に利用できる機能を分けて評価する必要がある。
CambriaとGigaverseに見る小規模ゲームの勝ち筋
もう一つのグループは、小規模なピクセルアート作品やダンジョン探索ゲームだ。CambriaとGigaverseは、比較的限定された開発範囲の中で、危険を冒して報酬を持ち帰る高リスク・高リターン型の体験を提供してきた。
Cambriaは公式サイトで、自らを「risk-to-earn MMORPG」と位置づけている。スキル育成、対人戦、対環境戦、取引、政治、探索などを、オンチェーン上のリスクと報酬に接続する構想だ。初期のPvPでは、参加者が資産を賭ける仕組みが強い注目を集めた。
ただし、勝者への報酬が敗者の継続的な損失に依存するだけでは、参加者が減った時点で循環が弱くなる。そこでCambriaは、単発の賭け対戦から、キャラクター育成、社会的地位、取引、コミュニティ運営を含むMMORPGへ軸足を移している。
Gigaverseも、ピクセルアートによるダンジョン探索という理解しやすい構造を採用する。小規模チームにとって重要なのは、大手作品と映像規模で競うことではなく、限られた制作費でも繰り返し遊べるループを設計することだ。もっとも、出金目的で集まったユーザーを、世界観や成長そのものを楽しむプレイヤーへ転換できるかは、CambriaとGigaverseの双方に残る課題である。
2026年のWeb3ゲームを判断する実用的な基準
プレイヤーや投資家がプロジェクトを評価する際は、トークン価格やNFT取引高だけを見ない方がよい。まず確認したいのは、暗号資産報酬がなくてもゲームを続ける理由があるかどうかだ。Sorareならスポーツ予想とカード編成、EVE Frontierなら探索と社会構築、Cambriaなら成長と対人関係が該当する。
次に、売上の源泉を確認する。新規NFT販売だけに依存しているのか、継続課金、ゲーム内消費、取引手数料、ライセンス、外部開発者によるコンテンツなど複数の収益源があるのかで耐久性は変わる。
さらに、公式ドキュメントで現在提供中の機能と将来構想を分けることも重要だ。EVE Frontierのオープンなゲーム世界やMapleStory Universeの拡張エコシステムは長期的な計画を含む。構想の魅力だけでなく、公開済み機能、更新履歴、運営体制を確認したい。
最後に、経営面も見る必要がある。Sorareの再建やAnimoca Brandsの上場協議停止は、優れたIPや技術だけでは企業の継続性を保証できないことを示した。資金調達後の支出管理、監査と情報開示、ユーザー基盤の維持まで含めて評価することが重要だ。
まとめ
2026年9月のブロックチェーンゲーム市場では、派手な新規参入よりも、既存企業がどのように事業を持続させるかが主要テーマになった。SorareはArcadeを入口にユーザー層を広げ、追加資金を使って黒字化を目指す。Animoca Brandsは逆上場協議を停止したものの、主要取引所への上場方針を維持している。
大規模分野ではMapleStory UniverseとEVE Frontierが、既存の開発能力をオープンなゲーム経済へつなげようとしている。一方、CambriaとGigaverseは小さな開発範囲と高緊張のゲームループを武器にしつつ、短期的な金融競争から継続型MMORPGへの転換を模索する。
共通する教訓は、ブロックチェーンが事業モデルそのものを代替するわけではないということだ。長期的に生き残るには、遊び続ける理由、持続可能な収益、適切な経営管理を一体として設計しなければならない。

