ブロックチェーンゲーム市場は、大手が長期的な経済圏を構築する路線と、小規模チームが高リスク型ゲームから持続的なMMORPGへ発展する路線に分かれつつある。 2026年9月の注目例は、CambriaとMapleStory Universeだ。両者に共通する課題は、短期的な投機ではなく、プレイヤーが継続して価値を消費・創造するゲーム経済を成立させられるかにある。
2026年のブロックチェーンゲームは二極化へ
BlockchainGamerが2026年9月18日に公開した週間まとめは、現在のブロックチェーンゲームを大きく二つのグループに分けている。
一つは、豊富な資金とオンラインゲーム運営の経験を持つ企業が手がける大型プロジェクトだ。代表例として挙げられたのが、NexpaceのMapleStory Universeと、Fenris CreationsのEVE Frontierである。
MapleStory Universeは、長年運営されてきた「メイプルストーリー」のIPを基盤に、ゲーム、NFT市場、トークン、外部開発者向け機能を組み合わせたエコシステムを構築している。EVE Frontierも、単発のNFTゲームではなく、プレイヤーが資源や施設、組織を通じて世界へ関与する持続的な宇宙サバイバル環境を目指す。
もう一つは、CambriaやGigaverseに代表されるインディー系プロジェクトだ。ピクセルアート、ダンジョン探索、装備の獲得と喪失といった比較的明快な仕組みを採用し、小さな開発規模でも緊張感のあるゲーム体験を作りやすい。
ただし、資産を持ち帰れるか失うかという構造だけでは、勝者の利益を敗者の支出が支える状態になりやすい。短期的な取引量を生み出せても、参加者が減れば経済は縮小する。この弱点をどう克服するかが、2026年のWeb3ゲームに共通する論点になっている。
Cambriaが賭け型PvPからMMORPGへ進む理由
Cambriaは、PvP、PvE、採集、取引、領土争いなどを組み合わせた、オンチェーン要素を持つファンタジーMMOだ。公式ブランド資料では、RuneScapeやUltima Onlineに影響を受けた世界観と、リスクと報酬を軸にしたデジタル経済が示されている。
初期のCambriaで注目されたのは、プレイヤーが資産をリスクにさらす対戦やダンジョン探索だった。勝利すれば戦利品を持ち帰れる一方、失敗すれば投入した価値を失う。この仕組みは観戦しても理解しやすく、暗号資産に慣れたプレイヤーとの相性もよい。
一方で、敗北したプレイヤーが何度も同じリスクを負うとは限らない。報酬目的の参加者は、利益が得にくくなった時点で別のゲームへ移る可能性がある。そこでCambriaは、一時的な勝敗だけでなく、キャラクター、建物、ギルド、領土、社会的な地位を積み上げる永続的なMMORPGへ軸足を移している。
2026年9月にはCambria Foundationの設立と、RSGPを中心とするGenesis経済の構想が発表された。公開情報では、永続資産、ギルド財務、資源競争、都市経済などが想定されている。ただし、トークン供給量、配分、使用チェーン、生成イベントの具体的な日程などは発表時点で明らかにされていない。
重要なのは、トークンの存在そのものではない。プレイヤーが利益を外へ持ち出すだけでなく、建物、装備、ギルド運営、領土内での影響力など、ゲーム内の地位へ価値を戻したくなる設計を作れるかどうかだ。
MapleStory Universeが公開した経済データ
MapleStory Universeを運営するNexpaceは、2026年上半期のオンチェーン経済に関するレポートを公開した。これは、Web3ゲームの持続性を判断するうえで重要な事例である。
公式発表によると、2026年上半期のプロトコル収益は3,098万NXPCだった。これに対し、MapleStory Nのゲームプレイ報酬として配分された価値は2,814万NXPC相当で、差し引き284万NXPCの純吸収となった。
つまり、測定対象となった期間では、エコシステムが配った価値より、プレイヤー活動から得た価値の方が大きかった。多くのPlay-to-Earn型ゲームが、利用よりも報酬排出に依存して崩れたことを考えると、この関係は注目に値する。
収益の中心は、アイテム強化や融合などのゲーム内用途だった。単にNFT市場の投機取引だけでなく、遊ぶための消費が収益を支えている点が重要だ。Nexpaceは収益に連動したNXPCのバーンも実行し、オンチェーンの取引記録を公開している。
ただし、これだけで長期的な成功が保証されたわけではない。NESOはゲーム内通貨であり、報酬額はNXPC換算で表示される。NXPCの市場価格も変動するため、法定通貨換算額だけを見ると経済の実態を誤解しやすい。読者がプロジェクトを評価する際は、トークン価格よりも、収益と報酬の比率、ゲーム内需要の内訳、継続率、バーンのルールを確認するべきだ。
EVE FrontierとGigaverseが示す「世界」の価値
EVE Frontierは、プレイヤーが厳しい宇宙環境で生存し、資源やインフラをめぐって協力・対立するゲームとして開発されている。特徴は、ブロックチェーンを単なるアイテム販売の仕組みとしてではなく、世界のルールやプレイヤー間システムを拡張する基盤として扱っている点だ。
これはCambriaのMMORPG化とも共通する。プレイヤーが長く残る理由は、換金可能な報酬だけではない。所属する組織、築いた評判、支配する場所、他者との外交関係など、時間をかけて形成した文脈そのものが離脱コストになる。
インディー側ではGigaverseも、区切られたダンジョン中心の体験から、より永続的なMMORPG世界へ拡張する方向を示している。CambriaとGigaverseが同時期に似た進路を選んでいることは、高リスク型ダンジョンが入口として有効でも、それだけでは長期運営が難しいことを示唆する。
大手とインディーでは予算もIPの知名度も異なる。しかし、最終的に必要なものは似ている。プレイヤーが利益以外の理由でもログインし、コミュニティ内で役割を持ち、ゲーム世界へ価値を戻す循環である。
AIとUGCが新しい成長経路になる
同じ週には、AIをゲーム制作やプレイへ取り込む動きも相次いだ。
Sky MavisのAxie Vibeathonは、AIコーディングツールを使ってプレイ可能なAxieゲームを制作するオンラインイベントだ。公式発表では、参加者は自らゲームをホストし、プレイ用リンク、説明、操作方法、リポジトリ、デモ動画などを提出する。賞金枠は2万bAXSで、一次審査を通過した最大8人が次の制作段階へ進む設計になっている。
Animoca Brands系のMindsとAWSによるAgentic Football Cupでは、プレイヤーがサッカー選手を直接操作するのではなく、自然言語でAIエージェントへ行動方針を与える。Parallel StudiosのColony: Survivalも、AIキャラクターとの会話や生成型の選択肢をゲーム体験へ組み込んだ。
これらの事例が示すのは、AIが開発費を下げるだけでなく、プレイヤーを制作者や指揮官へ変える可能性だ。MapleStory UniverseやEVE Frontierのような世界型ゲームに外部開発者やUGC制作者が参加すれば、運営会社だけでは供給できないツール、ミニゲーム、取引サービス、コミュニティ機能が生まれる。
ただし、AIで作品を量産できることと、遊び続けたいゲームを作れることは別問題だ。審査、安全性、IP利用条件、コードの保守、オンチェーン機能の監査など、人間による品質管理は引き続き必要になる。
Web3ゲームを評価する実用的なチェック項目
2026年のWeb3ゲームを見る際は、トークン価格や一時的な取引量だけでなく、次の点を確認したい。
第一に、ゲーム内で価値を使う理由があるか。MapleStory Universeのアイテム強化や、Cambriaの建物・領土・ギルド運営のように、ゲームを続けるための需要が必要だ。
第二に、報酬排出と収益の関係が公開されているか。Nexpaceのように、収益、報酬、バーン方法を定期的に開示する姿勢は、経済状態を判断する材料になる。
第三に、資産を失ったプレイヤーにも再参加する動機があるか。勝者だけが残る設計では、時間とともに参加者層が細る。CambriaやGigaverseのMMORPG化では、戦闘以外の生産、交易、社会的役割が十分に用意されるかが焦点となる。
第四に、ブロックチェーンがゲーム体験を改善しているか。所有、取引、外部開発、検証可能な経済などに具体的な利点がなければ、ウォレット操作や価格変動の負担だけが残る。
最後に、未発表情報と確定事項を分けることが重要だ。CambriaのRSGPを含め、供給量や配分が未公開の段階では、将来価値を前提に判断すべきではない。ゲームの完成度、運営実績、利用目的を先に見る必要がある。
まとめ
2026年9月のブロックチェーンゲーム市場では、短期的な投機体験から、永続的な世界と持続可能な経済へ移行する流れが鮮明になった。
CambriaとGigaverseは、高リスク型ダンジョンを入口にしながらMMORPGへ拡張しようとしている。MapleStory Universeは、ゲーム内利用から得たプロトコル収益が報酬排出を上回ったという公式データを公開した。EVE Frontierは、プレイヤーが世界の仕組みに関与できる長期型ゲームを志向している。
一方、Axie Vibeathon、Agentic Football Cup、Colony: Survivalは、AIを使ってプレイヤーの役割を開発者やエージェント設計者へ広げている。
今後の勝敗を決めるのは、トークンを発行できるかではない。プレイヤーが遊び、作り、協力し、得た価値を再びゲーム世界へ戻したくなる循環を構築できるかである。

