MapleStory Universeは2026年上期、プレイヤー活動から得たプロトコル収益が、MapleStory Nで配布されたゲームプレイ報酬を上回った。 上期の収益は3,098万NXPC、報酬は2,814万NXPCで、差し引き284万NXPCのプラスとなった。 ただし、これは企業会計上の利益やトークン価格の上昇を意味するものではない。オンチェーン経済における利用料と報酬量の関係を示す指標として読む必要がある。
MapleStory Universeの上期収益は990万ドル相当
BlockchainGamerが報じたNexpaceの「State of MapleStory Universe: H1 2026」によると、2026年1月1日から6月30日までのプロトコル収益は3,098万NXPCだった。期間中の日次市場価格を用いた換算額は約990万ドルとされている。
同期間にMapleStory Nのゲームプレイ報酬として配布された量は、NXPC換算で2,814万NXPC。収益が報酬を約284万NXPC上回り、オンチェーン経済が測定上の「純吸収」を記録した形だ。
四半期別では、第1四半期の収益が約1,438万NXPC、報酬が約1,321万NXPCで、差額は約117万NXPCだった。第2四半期は収益が約1,660万NXPC、報酬が約1,493万NXPCとなり、差額は約167万NXPCへ拡大した。
第1四半期から第2四半期にかけて、収益は15.4%、報酬は13.0%増加した。収益の伸びが報酬の伸びを上回ったため、四半期のプラス幅も広がっている。Web3ゲームではトークン配布量だけでなく、そのトークンがゲーム内でどれだけ使用・回収されているかが重要であり、今回の結果はMapleStory Nに実利用を伴う消費経路が存在することを示した。
収益の94.82%をゲームコンテンツが生んだ
上期のプロトコル収益で特に注目されるのは、MapleStory Universe Marketplaceの売買手数料ではなく、MapleStory Nのゲームコンテンツが中心だった点だ。
アイテム強化やFusionなど、ゲーム内コンテンツに関連する支出は2,937万3,367NXPCに達し、全プロトコル収益の94.82%を占めた。マーケットプレイス手数料の構成比は残る5.18%だった。
コンテンツ収益だけでも、上期のゲームプレイ報酬を約123万NXPC上回る。つまり、今回の収益超過はNFTの二次流通手数料だけに依存した結果ではない。プレイヤーがMapleStory Nを進め、装備を強化し、ゲーム内システムを利用する過程で発生した支出が主要な収益源となっている。
公式ホワイトペーパーによれば、MapleStory Nでは人気や需要に応じてアイテム強化価格が変動するDynamic Pricingを採用している。また、ReactorはNXPC FissionとItem Fusionを扱い、NXPCとNFTアイテム群を結び付ける役割を持つ。こうした仕組みによって、NXPCは単なる外部取引所の売買対象ではなく、ゲーム内アイテム経済を動かすユーティリティとして利用される。
NXPCとNESOの違いに注意が必要
収益と報酬を比較する際には、NXPCとNESOを同じものとして扱わないことが重要だ。
MapleStory Nのプレイ報酬はゲーム内通貨NESOで配布され、今回のレポートでは10万NESOを1NXPCとする固定交換比率によってNXPC相当に換算されている。したがって「2,814万NXPCの報酬」とは、同量のNXPCがプレイヤーのウォレットへ直接送付されたという意味ではない。
MapleStory Universeの公式資料では、SwapがNXPCとNESOの固定比率による交換を担い、NXPCはエコシステム全体、NESOはMapleStory N内部で使われる通貨として設計されている。両者は接続されているものの、利用場所と役割は異なる。
また、990万ドルという収益額も、期間中のNXPC市場価格を用いた評価額である。暗号資産価格は変動するため、現在価格で同じドル価値が維持されているとは限らない。プロジェクトを評価する際は、ドル換算額だけでなく、NXPC建ての収益、報酬、利用内訳を併せて確認したい。
上期収益を基に620万NXPCを焼却
Nexpaceは、2026年上期の収益に対応するNXPCのバーンも完了した。5月21日に第1四半期分として287万6,483.83NXPC、7月16日に第2四半期分として332万5,525.83NXPCを焼却している。合計は約620万NXPCで、実行時期に基づく評価額は約200万ドルだった。
公式方針では、MapleStory Universeのユーザー活動から生じたプロトコル収益の20%を、四半期ごとにNXPCの焼却へ充てる。Henesysチェーンにはトークン自体のburn関数がないため、対象NXPCを回収不能なデッドアドレスへ送る方式が採用されている。
2026年7月16日時点の累計焼却量は1,165万NXPCで、最大供給量10億NXPCの1.165%に相当する。個々の実行はオンチェーン取引として公開され、第三者が確認できる。
ただし、バーンは価格上昇を保証する仕組みではない。流通量に影響する要素の一つではあるが、NXPCの市場価格は需要、報酬配布、市況、流動性など複数の要因で変動する。今回重要なのは、固定量を宣伝目的で焼却したのではなく、実際に発生したプロトコル収益に連動して焼却量が決まる点だ。
マーケットでは274万件超の取引を記録
2026年上期のMapleStory Universe Marketplaceでは、274万235件の取引が行われ、総取引額は約3,210万NXPCだった。レポートと同じ日次評価方式による換算額は約1,020万ドルで、1取引当たりの平均は約11.71NXPC、約3.74ドル相当となる。
公式ホワイトペーパーによれば、同マーケットプレイスではキャラクター、装備、消費アイテムなどのNFT・FTを取引できる。装備レベル、職業、強化段階などによる検索に加え、消費アイテムにはオーダーブック形式も用意されている。
平均取引額が比較的小さいことは、高額NFTだけが少数売買されている市場とは異なる可能性を示す。一方で、平均値だけでは取引額の分布や同一ウォレットによる反復取引までは分からない。Marketplaceの健全性を判断するには、今後もユニーク取引者数、継続率、アイテム別流動性などを併せて見る必要がある。
それでも、ゲームコンテンツ収益が全体の大部分を占めながら、別途274万件を超えるマーケット取引が成立した点は、MapleStory Universeがゲーム内消費とユーザー間取引の両方を持つ経済圏へ発展していることを示している。
85万ウォレットのうち66%が支払いを経験
2026年6月30日時点で、MapleStory Universeに参加したengaged walletは累計85万5,506件だった。このうち、ゲームコンテンツまたはマーケットプレイスを通じて少なくとも一度プロトコル手数料を発生させたpaying walletは56万4,714件で、全体の66.01%を占める。
この数字は、2026年上期に活動した月間アクティブユーザー数ではない。サービス開始以降に確認された累計ウォレット数であり、1人が複数のウォレットを使っている可能性もある。そのため、85万人の実利用者や、56万人の継続課金者が存在すると読み替えるべきではない。
一方、ウォレット単位のオンチェーン指標として見ると、参加ウォレットの過半数が何らかの有料行動を経験したことになる。Nexpaceは、登録アカウント、オンチェーン取引、engaged wallet、paying walletを区別して公表しており、Web3ゲームを比較する読者も各指標の定義を確認する必要がある。
今後の焦点は、MapleStory Nの大型コンテンツ更新に加え、MapleStory Universe SDKやMSU Spaceを利用した外部開発者の参加だ。SDKではキャラクター、NFT、マーケット、ネットワーク情報をOpen APIから利用でき、開発者はMapleStory IPを活用したSynergy Appを構築できる。中核ゲーム以外のアプリが利用と収益を生み出せるかが、次の成長段階を左右する。
まとめ
MapleStory Universeの2026年上期は、プロトコル収益3,098万NXPCがゲームプレイ報酬2,814万NXPCを上回り、284万NXPCの純吸収を記録した。収益の94.82%をMapleStory Nのコンテンツ利用が占め、マーケット手数料を除いても報酬を上回った点は重要だ。
さらに、上期収益に連動した約620万NXPCの焼却と、Marketplaceにおける274万件超の取引も確認された。GameFiの持続性を考えるうえで、報酬配布だけでなく、ゲームを楽しむための継続的な支出が成立しているかを測る有力な事例といえる。
ただし、収益超過は会計上の黒字やNXPC価格の上昇を保証しない。NESO建て報酬の換算方法、累計ウォレットと実ユーザーの違い、トークン価格の変動を踏まえ、今後も四半期ごとの収益・報酬・継続利用を追うことが重要だ。

