2026年8月第1週のブロックチェーンゲーム業界は、プロジェクトの「閉鎖」と「拡張」が同時に起きた象徴的な週でした。米国スタジオProof of Playが事業を終了する一方、そのインフラを引き継ぐGigaverseがMMORPGへの拡張を発表。さらにThe SandboxのAI活用ゲームジャム、Roninの評判システム「Honor Score」、Pixelsのオープンソース化など、ゲームの「持続可能性」をめぐる動きが目立ちました。本記事では、海外メディアBlockchainGamerの週間まとめをもとに、各トピックを日本語で整理して解説します。
Proof of Playの閉鎖とGigaverseの台頭
今週最も象徴的だったのが、米国のブロックチェーンゲーム開発スタジオProof of Playの事業終了です。同社は2023年に3,300万ドルのシードラウンドで華々しく登場し、独自のL3ブロックチェーンを立ち上げるなど、大規模な投資を前提とした「ムーンショット」型のアプローチを取っていました。しかし、独自チェーンの運用には年間数百万ドル規模のコストがかかり、その負担が重くのしかかっていたとみられます。
一方で、そのインフラの一部を引き継ぐ形で存在感を高めているのがGigaverseです。GigaverseはProof of Playの低レイヤーインフラを一部利用しており、CEOのDith氏はかつてProof of Playのビジネス開発リードを務めていた人物。両プロジェクトには技術的・人的なつながりがあります。
ただし、両者の性格は大きく異なります。Gigaverseは当初NFT販売による自己資金(ブートストラップ)でスタートし、その後数百万ドル規模の投資を得た「たたき上げ」のスタートアップです。巨額の資金を前提とせず、地に足のついた開発を進めてきた点が、Proof of Playとの決定的な違いといえます。
Gigaverse Universe:ダンジョンクローラーからMMORPGへ
Gigaverseは今回、Gigaverse Universeという拡張構想を発表しました。これは現在のインスタンス型ダンジョンクローラーを、常時接続型の**MMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)**へと進化させるものです。
インスタンス型のダンジョンクローラーは、プレイヤーごとに独立したダンジョン空間を生成する設計で、比較的軽量に運営できる一方、プレイヤー同士の持続的な交流や大規模な経済圏の形成には限界がありました。これを「persistent(永続的)」なMMORPGへ移行させることで、より深いコミュニティ形成と長期的なプレイヤー滞在を狙う戦略と読み取れます。
閉鎖するProof of Playと、拡張するGigaverse。「一つのドアが閉じれば、別のドアが開く」という構図は、資金規模ではなく持続可能なビジネスモデルこそが生き残りの鍵であることを示唆しています。
The SandboxのAI活用ゲームジャム
メタバース・ゲームプラットフォームのThe Sandboxは、2回目のゲームジャムを8月12日に開催すると発表しました。7月に実施された小規模なアルファイベントに続くベータ版イベントで、より多くのクリエイターが新しいAI主導のStudioツールを試せる機会となります。
The Sandboxはこれまで、専用ツール「Game Maker」でノーコードのボクセル空間制作を可能にしてきましたが、生成AIの潮流を取り込み、制作プロセスをさらに効率化しようとしています。加えて注目すべきは、同社の看板資産であるLAND NFTの機能強化です。
新たな方針では、LAND NFTに紐づく体験(experience)に対して、デフォルトの作品よりも優れた収益シェアと発見性(discovery)を付与し、公開権限も強化される予定です。つまり、LANDを保有するクリエイターほど、自作コンテンツを有利な条件で展開できるという設計です。
もっとも、約200ドルを支払ってLAND NFTを購入する動機づけとしてこれが十分かは未知数です。The Sandboxは依然として「トークンを配らずにプレイヤーを獲得する」という根本課題を抱えており、AIによる制作体験の刷新がこの課題の解決につながるかが焦点となります。
Axie Infinityが導入する価値抽出のペナルティ
プレイして稼ぐ(Play-to-Earn)モデルの先駆けであるAxie Infinityは、2021年11月にピークを迎えました。しかし2026年現在、ゲームから価値を引き出そうとすると、少なくとも15%、場合によっては最大82.5%もの「スラッシュ(削減)」が課される仕組みになっています。
この削減率は、プレイヤーのAxie Scoreと呼ばれる健全性指標に基づいて決まります。ゲームへの貢献度やエコシステムへの関与が低いプレイヤーほど、資産を引き出す際のペナルティが大きくなる設計です。かつて無制限に近い形で報酬を引き出せた時代とは対照的に、短期的な稼ぎ目的の離脱を抑制し、エコシステムに長く関与するプレイヤーを優遇する方向へと舵を切っています。
これは、Play-to-Earnが抱えてきた「トークンの過剰なインフレ」と「稼いだら離脱するプレイヤー」という構造問題への、実践的な対処策と位置づけられます。
RoninのHonor Score:クロスゲーム評判システム
Axieを支えるブロックチェーンRoninも、同様の思想に基づく新機能を導入します。それがHonor Scoreと呼ばれるクロスゲーム型の評判システムです。
Honor Scoreは、プレイヤーの全般的な活動を基に算出されます。具体的には、どのゲームをプレイしているか、どんな資産を保有しているか、エコシステムにどれだけ参加しているか、といった要素が評価対象です。Axie Scoreがペナルティ側に働くのに対し、Honor Scoreはインセンティブ側に重心を置いている点が特徴です。
Honor Scoreが高いプレイヤーほど、より良い報酬に加え、エアドロップの機会、新作ゲームへの早期アクセスといった特典を得られます。単一ゲーム内の評価にとどまらず、Roninエコシステム全体を横断する評判を可視化することで、プレイヤーの長期的なロイヤルティを育てる狙いがあります。
Pixelsのオープンソース化という賭け
2024年初頭にピークを迎えたPlay-to-EarnゲームPixelsは、さらに踏み込んだ「破壊的」な戦略を展開しています。それがオープンソース化です。
今週、Pixelsはまずフロントエンドを公開しました。今後はバックエンドの公開が続き、新たなクリエイター向けツールも整備される予定です。さらに注目すべきは、プレイヤーがゲーム自体を**フォーク(分岐)**し、独自バージョンを作れるようになるという点です。
これは、運営元が中央集権的にコンテンツを管理する従来型のモデルとは正反対のアプローチです。コミュニティ主導での派生ゲーム開発を促し、エコシステムの拡大をコミュニティに委ねる試みといえます。成功すれば分散型ゲームの新たなモデルとなり得ますが、品質管理やブランド一貫性の維持という新たな課題も伴います。
まとめ
2026年8月第1週のブロックチェーンゲーム業界は、「持続可能性」というテーマが各プロジェクトの動きに共通して表れた週でした。Proof of Playの閉鎖とGigaverseの拡張は、巨額投資よりも堅実なビジネスモデルの重要性を示し、The SandboxはAIを活用した制作体験の刷新で再起を図っています。
また、Axie InfinityのAxie ScoreやRoninのHonor Scoreは、短期的な稼ぎ目的の離脱を抑え、長期的なエコシステム参加を促す評判システムの実装例です。Pixelsのオープンソース化は、コミュニティ主導型ゲームという新しい方向性を示しています。
いずれの動きも、Play-to-Earnブームの反省を踏まえ、「稼ぐ」から「関わり続ける」へと価値の重心を移そうとする業界全体の模索を反映しています。投資判断を行う際は、こうした構造的な変化と各プロジェクトの持続可能性を、公式ドキュメントで確認しながら見極めることが重要です。

